北海道教育大学名誉教授
                 北海道デザイン協会会長
                           伊藤 隆一
名寄市立病院医誌8巻1号:76〜77,1999.
 私のあくまでの個人的な印象ですが、現代の医学の進歩には目をみはるものがあります。長寿国としての世界のトップレベルにあることもそれを象徴している事実です。私たちはその恩恵を受けて今日の生活がありましょう。名寄市立病院もその例にもれず市民からの信頼を受けて最高の医療技術を展開しています。新しい時代に対応した施設で市民としては満足度100パーセントと思います。明るくゆとりのある空間、充実した機能と市民の誇りとして存在しましょう。病院が病に悩む人たちのための施設と共に、そこで勤務する人、訪れる人に対してのふれあいの場としても重要です。この病院は計画の段階から利用する市民との接点として考え方を進めて行きました。無機的空間から利用する人たちの心の豊かさを高揚する場としての新しい病院づくりです。このことは当然の配慮のはずですが、まだ一般的には無視されて計画されているところが多いのが現実です。病気を治すことは心理的な作用が多いと云われていますが、意外と無視されているのが残念で、病院は暗いイメージがふつうとなっているのは淋しいことです。
 快適な新しい病院づくりを市立病院で実践しようとの計画から、ロビーの壁面に名寄らしいデザインを施そうとの話し合いとなりました。白い壁を有機的な雰囲気にしようとの発想です。明るい広々とした空間に、壁画に施した作品が強くなりすぎてもゆとりがそこなわれます。ホテルのロビーとは目的が違うことも大切な条件です。落ち着きさとか気品だけでは病院の場合は違ってきます。それぞれの条件の上から、病気の人たちに元気になってほしい雰囲気づくりを配慮しました。そのテーマとして鳥が大空に翔ぶイメージをとり上げてました。元気よくなってはばたいてほしいとの願望です。北海道で育っている木材を使いました。道産子の鳥たちです。渋い配色で鳥が構成されていますが、それぞれの色は木の種類の色です。北の風土から生まれた自然の造形です。木の鳥だけですと変化に乏しいのでステンレスの鳥も加えました。シャープでモダンな鳥です。木と金属の鳥の対比をバランスよく配置しました。様々な鳥たちが仲良く北の大空に飛んでいく姿があり、未来にむかってはばたく名寄市民の心意気も表現しました。
 三つの壁面を優雅に飛びながら元気よく出口に向かう鳥たちであり、病気から健康な体になって、元気なエネルギーを発散させることを祈ってのデザインです。病院を訪れる人たちの少しでも心からのゆとりとやすらぎを感じて戴ければ作家冥利につきます。名寄市立病院、患者さん、そして市民のみなさんが元気よく北の空にむかって飛躍されますことを祈念いたします。

 伊藤隆一先生の紹介     坂田 仁
「市立病院のロビーの壁画は、元気になった多くの患者さんたちが玄関に向かい、病院から出ていこうとしている姿なんだ。」と以前に伊藤先生から聞いたことがありました。みなさんに壁画にも意味があることを知って欲しかったので、この春に先生に寄稿をお願いしました。先生の作品は、芦別市立病院ロビーや千歳空港の入り口などたくさんあります。木や草花、鳥たちを題材として、この北海道の大地、大空を表現されているのだと思います。卵殻や螺鈿を用いたカラフルな先生の漆工芸にもどこかで出会うことがあるかも知れません。
 先生は北の暮らしの随想をいくつも出版されています。国際雪像競技会の審査委員としても活躍されており、冬の名寄にもたびたび足を運んでいただいています。

追伸 先生には兄弟のようなおつき合いをさせていただきました。そして、これからも名寄の応援団長としてがんばって欲しかったのですが、平成12年7月9日に亡くなられました。ご冥福をお祈り致します。

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