雪と氷の像に光を(作成中)
地域と住民第13号:177〜181,1995.
はじめに
 道北の冬の恵みとして雪と寒さが挙げられる。ミニ雪像を毎年作ってきた私たちにとって、作品の完成したときの感動があるので零下20度を越える屋外での創作活動も苦にならない。平成2年に名寄市で利雪親雪シンポジウムと北国文化フォーラムが開催されたのに合わせて駅前に北海道東海大学のスタッフによる氷の像(凍像)の制作をお願いした。その凍像は大きく、美しくかつ夜間のライトアップ(像の内部に照明が設置されている)が一段と映える作品であった1)2)。ミニ雪像もマンネリ化してきており、ライトアップは新しい分野をひらかせる可能性があった。雪像に光を与えるというテーマでこの数年行ってきたことを報告する。

作品と制作方法
1)氷像の部
(1)ミニ雪像とアイスキャンドル'91(写真1)
下川町の冬の風物詩として有名になったアイスキャンドル3)は雪像の横に飾られるだけで楽しさが増す。
写真1 ミニ説雪像とアイスキャンドル
(2) 凍像'93
91年の東海大学の凍像は六角形を基本としてデザインされている(図1,写真2)。
 92年に凍像を作り始めて2作目で完成度の高い八角形をベースとした作品ができた(写真3)
図1 モニュメント計画
写真2 凍像'91
写真3 凍像'93
 制作方法は、まず材料で枠組みを作り、約30cm巾白布を順次木のステイに通して全体像を形成、後は夜間の冷却を待ち、自家用車洗浄用のウオッシュガンを用いて霧状にして散布する(写真4)。約2cm程度の氷の厚みができたところで型枠を除去する。除去後に仕上げの散布を行い完成とする。
写真4 凍像の作り方
 凍像は日中の暖気・直射日光により氷の滴ができたり、形をわずかに変えながら生き物のように数日を過ごす。凍像の鑑賞は日中の青空の下に行うのも良いが、夜間のライトアップにはいろいろな色を使うことでいっそう楽しみが増す。
(3) 凍像'95(写真5,6,7,8)
今年の作品は、素材のおもしろさを考えて縦横に伸びる円筒状のネットに風船を入れて作製した。霧吹きで気の長い作業だが、作品の経が小さかったこともあり、ウオッシュガンのように膨大な量の水を必要としなかった。小売りの厚みは約1cmである。夜間には投光機とイルミネーションを用いてライトアップした(ひな祭の日に子供たちが三人官女しかりとして写ったことから「Bom-Bori」と題をつけた)。
 凍像の局所の部分では、凍像'93の布の間のダイアモンドや凍像'95の空に向かって広がるところに美しさが感じられる。
写真7凍像'95霧吹き付け
写真5凍像'95(1)製作途中
写真6凍像'95(2)「Bon-Bori」
写真8凍像'95造形の美
2)雪像の部
 雪の造形物を紹介する(写真9,10,11)。まず雪を踏み固めてから鋸で適当な大きさにきったブロックを作製する。
写真9 雪像の作り方(1)
写真10 雪像の作り方(2)
写真11 雪像'94 完成図
光を反射させる後方の台座を形づくった後、さらにブロックを小さなブロックへと切り直して順次積み重ねる。隙間の大きさによりイメージは変わってくるが、これも漏れ出る光は小さく影ができるのが好ましい(雪像'94、後ろには凍像'94が写っている)。
(1) 雪像'93,'94(写真12,13)
前年に作った雪像'93はブロックの積み重ねが不規則で、'94では規則正しく積み重ねてみた。どちらにもそれぞれの味わいがある。テーマは「雪光柱」とした。それぞれが放つ光は周りの雪像をもひきたたせる働きがある。その点では凍像も同じであるがいくつかの作品を集合させるのも楽しい。
写真12 雪像'93とミニ雪像
写真13 雪像'94と凍像'94
(2) 雪像'95(写真14,15)
雪像'95は「雪模様」というテーマの作品である。数日すると自然の力による造形は想像をこえており、作者の力をはるかに凌いだ作品へと生まれ変わった。さらにこの作品はアイスキャンドルで飾られることにより夜間の鑑賞が楽しいものとなり、「時空の軌跡」(雪像の出来上がりまでに時間が流れ、形が変化して、アイスキャンドルはその軌跡を示している)と題を付けた。
写真14 雪像'95「雪模様」
写真15 雪像'95「時空の奇跡」
おわりに
 雪や氷という素材は、私たち北国に住むものにとって非常に安く、簡単に手に入れることが出来るものである。寒い冬のひとときの雪像づくりは市民にも浸透し、毎年多くの雪像が作られ、それぞれの家庭や子供たちの成長の記録としても残っていく。作られた雪像は解けておどけたピエロになるように、又、雪像'95のように作者の意図とはかけ離れた素晴らしい作品に変貌に変貌することもある。時という要素を見つめ直すことも必要であろう。
 最後に、雪像ユ95を作った時にブロックの切り出しに用いたコンパネ4枚を横にして踏み固めた雪の残りを利用して「名寄の冬」(写真16)という題で簡単な雪像を作った。窓を開けた家々に1個づつの雪だるまが作られている。名寄の冬は誰が造り始めるということなしに町並みがミニ雪像で埋め尽くされ、メルヘンの世界が広がる、そんな日が来ることを夢見て…
写真16 「名寄の冬」
文献
1) 後藤 充弘,谷山 翔二:「研究凍像'91新たな可能性を求めて(PART III)」.北海道東海大学北方生活研究所所報16:8'17,1991.
2) 荒井 善則:研究凍像'91名寄冬祭りにおけるモニュメント制作.北海道東海大学生活研究所所報16:18−19,1991.
3) 伊藤 隆一:北の暮らし歳時記.毎日新聞社,1982.
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